歴史あるゲランの香水『MITSOUKO(ミツコ)』の香りと口コミ

1900年代初頭のヨーロッパでは、日本文化への興味が集まっていました。 1909年出版のベストセラー小説『ラ・バタイユ』 では日露戦争時の英国将校と日本人女性ミツコとの秘密の恋が描かれています。ミツコのもつ慎ましやかでありながら強い意志を持つたおやかさをイメージしたのが、 ゲラン の香水 『ミツコ』 です。

小説『ラ・バタイユ』の作者のクロード・ファレールと、製作者ジャック・ゲランは友人でもあります。

発売から100年たっても色あせないその魅力。ミツコが持つ古き良き日本女性の美点を体現したものと言えるでしょう。日本文化への興味が集まっていたその時期ゆえの、 どこか日本的な雰囲気もある香水 です。

第一次世界大戦終了後間もない当時に求められた女性の強さが、そこにはあったのでしょうか。時代背景を知れば知るほどに、その奥深さを感じずにはいられない名香です。

今回は、そんな時代を超えた名香『ミツコ』の香りと口コミをメインで紹介します。

併せて、 ゲランの新作香水『モン ゲラン』と人気の『イディールオーデパルファン』『ランスタン ド ゲラン』 についても少し触れたいと思います。

ゲランの香水『ミツコ』の特徴

「和洋折衷」 。日本的な部分と西洋的な部分の融合。ミツコが持つ日本人女性の美徳。それをヨーロッパ的な解釈と手法で表現した香水がこのフレグランスです。フルーティーが、ウッディを纏いながらシプレーに溶けていく東洋的神秘を思わせる香りです。

ピーチを初めてフレグランスに用いました。濃厚なシプレーにピーチを併せるといったその大胆な方法は、海外旅行でさえ一般的でなかった時代に日本から英国へ嫁ぐ、彼女の意志の強さと大胆さ、斬新さを表しているように思えます。

ミツコの香りは?

  • 香調:シプレー
  • トップノート…ベルガモット
  • ミドルノート…ローズ・ジャスミン・ピーチ
  • ラストノート…オークモス・スパイス類・ウッド

トップノートではちょっと古風な印象の柑橘系が出ます。古臭いわけではなく上品な、高級な印象。人によってはきついと感じることもありますが、それもすぐに落ち着いてフルーティーとフローラルが顔を出します。

知的で奥ゆかしいフローラルがフルーティーをはかなげに演出。ラストノートではモスとウッディで落ち着きのある雰囲気へといざないます。それはまるで、花や果実の香りの残る森林の中を歩くよう。


私が生まれて初めて手にした香水、それがゲランのミツコ

私がゲランを始めて知ったのは「ミツコ」という名前の香水があったからです。自分の名前が香水になっているのですから、どんな香りなんだろうといつも思っていました。

私が生まれたのは今から半世紀も前のことです。当時私が田舎から東京の大学に出たころ、やっと海外からブランド品が入り始めた時代です。当時はよそ行きの洋服といえばオーダーメイドでしたし、それこそ子供のころの普段着は母親が近くの洋裁の出来るお姉さんに簡単な服を作ってもらっているような時代でした。

東京で学生生活をするようになり、生活を始めて、原宿駅からぶらぶらと表参道を青山方面へ歩いていくと、並木道には高級マンションと同潤会アパートが建ち、ところどころにブティックが見られる風景でした。

その頃にファッション雑誌の「アンアン」や「ノンノ」が創刊されるようになって、若者向けの高級ブランドがお洒落に紹介されるようになりました。今でこそデパートは海外からの化粧品ブランドで溢れかえっていますが、そのころは資生堂が一番有名な化粧品でした。

今では若い子にも香水が普通に使われるようになりましたが、そのころはまだまだ高嶺の花でした。ブランド香水なんてそれこそ一般庶民には縁のない存在。そんな時代の海外旅行のお土産の一番人気と言えば、シャネルの5番。

マリリンモンローで有名になった「シャネルのNo.5を纏って眠る」という言葉から、香水イコール「シャネルの5番」というイメージが定着していました。

世の中では次第にブランドもののファションが紹介されるようになり、服とともに化粧品が紹介されるようになり、海外ブランドの化粧品コーナーには香水も沢山置かれるようになりました。

そこで、ミツコという香水がゲランから発売されていることを知りました。ヨーロッパ伯爵夫人である日本人の女性をイメージして造った香水とのことで、とても興味が沸きました。もしミツコという名前の人がゲランの「ミツコ」の香りをまとっていたらどんなにお洒落だろうと変なことを想像するようになりました。

誰かに「素敵な香りね」といわれて、さりげなく「私の名前と同じ、ゲランのミツコよ」と答えるなんてしてみたり。そんなこともあって、それ以来私の中でゲランは憧れのブランドとなってきました。

そして二十歳になった時に、自分自身への記念に手に入れることにしました。自宅に帰って早速使ってみたところ、自分のイメージと違ってかなり濃厚な香りに戸惑ったことを覚えています。それから私にとってゲランは本当の大人のための化粧品というイメージが占めています。

自分らしい香りを見つけることの重要さを教えてくれた思い出の品物となりました。

ミツコ使用者の口コミ

古き良き日本

100年も続く名香。古風な、言い換えればアンティークな印象のある香り。ですが、それは古臭いという意味ではなく 「古き良き日本」 を思わせる香りです。

優雅さ、エレガントさもありながらも過度に華美ではなく、風格があり奥ゆかしいオリエンタルな印象。凛とした女性、育ちのいい良妻、上品なおばあ様、そういった大和撫子な印象を与える香りです。

色気や甘さなどがあまりなく、媚びない強さ、静的な強さを持っている香りです。

相反する要素を持っている

古風というとどこか堅苦しい印象を与えることがあります。ですがこの香りには、そういった格調高い部分もありながらも人を引き付ける魅力があります。「一度体験したら、心から消せない。」と評価している人もいました。

ピーチの甘さもあるところからでしょうか、「ひかえめなのに、少しだけ甘さがあって可愛いところも見せれてくる。」という人もいます。スパイスもあるからでしょうか、「エレガントだけどセクシー」と感じた人も。

他には、

  • 渋さもあるけど渋すぎず甘さもある
  • シックな雰囲気に桃がある
  • 上品に見えて激しい情熱的な部分もある
  • 瑞々しい部分と、どこか乾いた印象の部分とある
  • 重厚さの中にもシャープなところがある

などのようなものが挙げられます。このように相反する要素によって、古臭くならずにある種アンティーク的な魅力として現代にも続いているのでしょう。「憧れと親しみが共存する不思議な香り。これほどバランスがいい香りはない!」という人もいるくらいです。

「外国人の友達に、あなたの雰囲気に合う香水だね、とよく言われます。ヨーロッパによくも旅行に行きますが、日本の文化や歴史も好きだったりするところが合うのでしょうか。」まさに和洋折衷な感じですね。

その他の香りの印象

もう少し具体的な感想を持った方の口コミを紹介します。

  • トップは高級石鹸のような、上品だけどキュートな香り。
  • 付けた直後は粉っぽい懐かしい香り、そのあとピーチが出てきます。
  • おしろいを甘くした感じがしました。
  • トップはラムネ菓子のようでした。でも安っぽい感じではないです。
  • 爽やかなトップのあとに苔や森林の匂い。
  • ミドルは知的で品格のあるフローラル。花や果実が垣間見える。
  • 昭和な男性整髪料の匂い。でも嫌な感じではない。
  • スパイスがお寺を連想させます。その中にもピーチの甘さも少しある感じです。
  • 古臭くない甘さのあるお香。残り香で石鹸ぽさ。
  • ラストノートでは樹木系と甘いモスの匂いがします。
  • ラストで特徴的な古風なシプレ。
  • うっそうとした森の中のような感じかな、少しオヤジ臭いともとれるかも。

トップノートでは柑橘系。ミドルノートではフローラルが加わり、ラストノートでウッディとモスとなるようです。おしろい、石鹸、お香といったパウダリーな印象もあるようです。

苦手な人にはどういう印象?

苦手との人の中に多かったのが、トップノートで苦手に感じてしまった人です。「トップがきつい」「最初は鼻にツンとくる感じです。」「トップさえ克服できれば他は良い匂いなのに」というような方が多くいました。

トップノートの柑橘系はすぐに飛びやすいので、そこさえ工夫できれば大丈夫かもしれません。あまり顔に近いところに付けないように工夫してみてはいかがでしょうか。

それ以外にはあまり具体的なポイントをあげられてはいませんでしたが、 「好き嫌いは分かれると思う」「万人受けという感じではない」 といった声もそれなりにありました。

大人な雰囲気を思わせるところから 「香りがつける人を選ぶ的なところがある。」 という感想も。


似合う大人になりたい

まだ香りの方が大人っぽくて自分には似合わない、と感じた人が多くいました。大人っぽいイメージの香水を付けた若者によくあることです。ですが、この『ミツコ』はちょっと違う点が2点あります!

1点は、 「私にはまだ似合わない」と言っている世代が40代でも多くいる ということ。

もう1点は 「これが似合う大人になりたい!」と思っている人が多い ところです。

他の香水では、年代で言えば10代~20代前半くらいが「まだ似合わない」と言っていて「数年後だったら大丈夫かも。」という軽いスタンスなのですが、これに関しては「似合うようになりたい!」とすでに大人の世代でもそう感じているようです。

そんなに敷居が高いのか、そんなに高貴な香りなのか、と思われるかもしれません。確かにそう感じる人もいるのですが、ここで伝えたいのは 「似合うようになりたい」と思わせる魅力が『ミツコ』にはある ということです。

他の香水を手に入れるだけの視野と財力がある大人にも、この香りを着こなしてみたいという気持ちを持ち続けさせる魅力があります。裏側にある歴史がそうさせるのでしょうか。

母からプレゼントされました。

親しい間柄の人に香水をプレゼントすることはよくあります。これも、「妻にプレゼントした」「友達にもらった」という口コミがありました。ですが、他の香水より多い比率で「母親から譲り受けました」という人が多かったのが印象的です。しかもプレゼントではなく「譲り受けた」と、丁重な表現で。

娘に対して「コレが似合う女性になってもらいたい」という思い、そして受け取った娘も「ありがたくも恐れおおい」そして「似合う大人になりたい」という気持ちになった、そんな印象を受けました。

我が家の伝統の味、ではないですが、つなぎ続けていきたい「理想の女性像」的な雰囲気を表している香水のように思えてきます。

寝る前にひと吹き

さて、ともすると高尚なイメージを持たれてしまうミツコですが、もっと 気軽に香りを楽しんでいる 人も大勢います。「好き嫌いもあるようなので、自室でリラックスしている時に付けて優雅な雰囲気に浸っています。」との声もありました。

似たような目的での使用で多かったのが「寝るときに付けています。」というものでした。寝室がいつもよりくつろげる空間に変われば眠りも良くなりそうですね。

これはラストノートにあるモス・ウッディによるものでしょうか。母親に包まれるような感覚をおぼえるのかもしれませんね。

持続時間は?

持続時間に関しては、使う状況や体温などで様々ではありますが、わりと持続するようです。オードトワレ使用者は「朝付けて、夕方でもほのかに匂いがする。夜用事があったらもう一回付ける程度」「トワレの割には長持ち」とのことでした。

「思ったより長持ちするので、付けすぎは注意ですね。」

ボトルが好き!

ボトルが好きという方もいっぱいいました。中には 「ボトルを飾るためだけに買いました!」 なんて人まで。外見だけでそこまで思わせるのはすごいですよね。

他には、「レトロな感じがあっていい」「姿勢が正しくなるような、そんな印象を受けるボトル」「飾ってても絵になるし、いつか使いこなす日まで、気持ちを忘れないようにするために飾ってます」との声も。

通販以外で手に入らない!?

なにげに目に付いたのが、 「店頭で見かける機会が減った」 というもの。そのためか「仕事柄海外によく行くので、残量を確認して、海外で買うようにしています。」という人もいれば、「よく海外に行く友人に、定期的に買ってきてもらってます。」という人もいます。

そして「通販でしか手に入らない!」と熱く伝えてきた人もいます。お住まいの地域にもよるので一概には言えないのでしょうが、店頭では手に入りにくくなっているのでしょうか。お気に入りの方は要注意ですね。

ゲランの香水『ミツコ』まとめ

今回はゲランのレディース香水『ミツコ』について紹介いたしました。商品名は『ラ・バタイユ』からとったものですが、俗説として「クーデンホーフ・ミツコ伯爵夫人」からとったというものもあります。

ミツコ伯爵夫人は、オーストリア=ハンガリー帝国の駐日代理大使のハインリヒ・クーデンホーフ伯爵と結婚し、1896年に夫の祖国に行った人物です。周りに日本語が話せる人がいない中、教養豊かな夫に見合うべく学問に励み、夫亡き後も家政を取り仕切るほどになりました。

小説の人物よりも実在の人物の方であったほうがより感銘をうけますので、俗説の方が人気なのも頷けます。個人的には『ラ・バタイユ』のミツコが「クーデンホーフ・ミツコ伯爵夫人」にインスパイアされた登場人物という説が一番しっくりきます。

そんなエピソードを持つこの香水は、日本でもマンガの中で登場人物がつけているなど、幅広く認知されています。是非一度手に取って、100年の歴史を感じ取ってみませんか?

なお、ゲランから新作として『モン ゲラン』が登場しました。こちらも名香になるかどうか楽しみです。

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